存在と痕跡

中之条ビエンナーレ(群馬・中之条) 2019年

様々なものが可視化されている現代において、見えないものを想像することは難しくなっているのかもしれない。

材木商で一財をなした群馬県で最大級のこの大屋敷には、かつての繁栄や影響力を持った痕跡が、まるで切り株のように今も残っているように感じる。

屋敷の外には、屋根と柱だけで建てられた風通しのよい木小屋があり、かつては使用人も住んでいたこの家で使う大量の薪が保管されていた。

私は、この大屋敷のそばにそびえ立ち、その歴史をずっと見てきたであろう、樹齢120年を超える大木の杉の丸太に、この場所に吹く風の痕跡を残すことにした。

年輪は歴史の痕跡であり、そこに風という見えないものの存在を痕跡として層を重ねる。

一方で、この原風景の広がる山間集落に突如として現れる鉄塔。福島や新潟で作った電力を首都圏に送り続けてきた電力網である。

エネルギーの問題は絶え間ないが、人はそれから離れることはできないだろう。

どちらかが悪く、どちらかが正しいということではなく、それぞれを同じ構成要素として扱う。自然の力とエネルギーが協働した時、我々に何か新たな気づきを与えてくれるかもしれない。